バリュープロポジションと実際の活用法を元事業会社マーケターが解説!

著者:佐々木 理人
JT、株式会社I-neを経て、株式会社Venture Oceanを創業。
株式会社I-neで新規立ち上げした「YOLU」は1年で売上70億、ドラッグストアのシリーズ別シェアNo.1になる。
市場調査、コンセプト策定、新規事業立上げが得意。
「競合他社との差別化が難しく、価格競争から抜け出せない。」そう感じているマーケティング担当者は多いのではないでしょうか。
商品やサービスのコモディティ化が進むなかで、自社ならではの価値をどのように打ち出すかは、多くの企業にとって共通の課題です。
この課題を解決するためのポイントになるのが、「バリュープロポジション」です。バリュープロポジションとは、競合他社には提供できない自社独自の価値を明確に定義した概念を指します。
この記事では、バリュープロポジションを策定する方法からマーケティング施策への活用法、陥りやすい失敗パターンまで解説します。
競合他社と比較されない自社の強みを生み出したい人は、ぜひ参考にしてください。
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目次
バリュープロポジションとは

バリュープロポジションとは、企業が顧客に対して提供する独自の価値を定義したものです。自社の商品やサービスが顧客のどんな課題を解決し、なぜ競合他社ではなく自社を選ぶべきなのかを明確に示す考え方であり、マーケティング戦略の起点になります。
バリュープロポジションには以下3つの要素が含まれます。
- 顧客が望む価値
- 自社の強みや提供できる価値
- 競合他社が提供できていない価値
自社の強みや提供できる価値と顧客のニーズが重なり、さらに競合他社が提供する価値との差別化によって生まれる自社独自の価値がバリュープロポジションです。
ここでは、バリュープロポジションが重要とされる背景と混同されやすいバリュープロポジションキャンバスとの違いについて解説します。
バリュープロポジションの重要性
バリュープロポジションを持つことは、競合他社との差別化を実現するために重要です。競合他社が増え、商品やサービスのコモディティ化が進む現在の市場では、機能面やサービス内容だけで顧客から選ばれることが難しくなります。
さらに、顧客がインターネットやAI、SNSを活用して情報収集・比較検討できる現代では、企業側もそれに応じて自社の価値を発信する必要があります。価格以外の判断基準を顧客に提示できなければ、競合他社との価格競争に巻き込まれる可能性が高まるでしょう。
情報を手に入れやすくなった現代では、顧客に対して価格以外の提供価値を明確にすることが、よりいっそう重要です。
バリュープロポジションキャンバスとの違い

バリュープロポジションが企業から顧客へ提供する独自の価値を指すのに対し、バリュープロポジションキャンバスはその価値を視覚的に整理・構築するためのフレームワークです。
バリュープロポジションキャンバスでは、左側に自社が提供できる機能やサービスを、右側に顧客が抱える課題や求める解決策を配置します。両者の認識を照らし合わせていくなかで自社の強みを明らかにし、顧客のニーズに合致した価値を導き出すことが可能です。
バリュープロポジションは定義すべき価値であり、バリュープロポジションキャンバスは定義すべき価値を導き出すための手段という関係です。
バリュープロポジションを策定するメリット
バリュープロポジションを定義することは、マーケティング活動全体にもプラスの影響をもたらします。
ここでは、バリュープロポジションを策定することで得られるメリットについて解説します。
ターゲット目線で商品価値がわかる
バリュープロポジションを策定するメリットのひとつは、顧客の視点から自社の商品・サービスの価値を客観的に把握できるようになる点です。
自社の商品やサービスを開発・提供する際、作り手の視点に偏り、顧客のニーズと乖離してしまうケースは珍しくありません。
バリュープロポジションを定義するなかで、顧客が抱えるニーズを起点に自社の強みや提供価値を見直す必要があります。その結果、商品やサービスの作り手の視点からだけでは気づけなかった顧客の本質的なニーズが明らかになり、以下のメリットが得られます。
- 顧客が求める機能や価値に絞った商品開発ができる
- 自社が考える強みと顧客が実際に評価している点の違いを把握できる
- 広告やSNSでの訴求内容を顧客ニーズに合わせて最適化できる
ターゲット目線で商品価値を定義することで、顧客ニーズに合わせた商品開発や訴求内容の見直し・改善につながり、売上拡大が期待できます。
自社の強みが言語化できる
バリュープロポジションを作る過程で、自社の強みを社内外へ正確に伝えられる形に言語化できるのもメリットのひとつです。
D2Cブランドの立ち上げ後にSNSや広告で発信するメッセージが定まらず、投稿ごとにターゲット顧客に対する訴求内容が異なってしまうケースは珍しくありません。競合他社にはない自社の強みを客観的に整理することができます。
たとえば、「30代の敏感肌女性に向けた、毎日使える低刺激スキンケア」といった形で強みを言語化できれば、組織内に自社の強みを再認識させることも可能です。
バリュープロポジションの作り方
バリュープロポジションを作ることで、自社ならではの価値を定義し、市場や顧客から選ばれる理由が明確になります。
ここでは、バリュープロポジションの作り方を網羅的に解説します。
顧客のニーズを調べる
バリュープロポジションを作るには、顧客ニーズを正確に把握することが重要です。自社の思い込みをなくし、事実に基づいた顧客の実際の意見・感想を拾い上げることで顧客ニーズから外れた施策を未然に防げます。
ニーズ調査では市場調査や既存顧客へのヒアリングを通じて定量・定性の両面から分析することが重要で、以下の方法が一般的です。
| 定量評価 | 定性評価 |
| ・アンケート ・オンライン調査 | ・インタビュー ・行動観察 ・訪問調査 |
ターゲットとなる顧客層が現在どんな課題を抱え、何を解決したいと 考えているのかを調査・分析しましょう。
市場調査の手法や活用方法は以下の記事で詳しく解説してるので、参考にしてください。
参考:市場調査分析の手法や活用シーンを解説!最適な戦略を構築するには
競合他社の価値を調べる
顧客のニーズを把握した後は、競合他社が提供している価値を調べることが重要です。
競合他社の価値を正確に把握できていなければ、意図せず似たような訴求をしてしまい、顧客から見たときに他社との違いが伝わらない可能性があります。
たとえば、化粧品であれば、以下の観点で競合他社の訴求を整理しましょう。
- ターゲット顧客の年齢層をどこに設定しているか
- 商品はどんな肌の悩みに向けて設計されているか
- ブランドストーリーをどの媒体で、どのように打ち出しているか
自社のバリュープロポジションを策定するためにも、競合他社が、誰のどのような課題をどんな手法で解決しているのかを詳細に調査・整理することが重要です。
競合調査を含めた市場調査の方法については以下の記事で解説しているので、参考にしてください。
自社の強みを棚卸し
次に、自社が持つ強みを客観的に整理して、バリュープロポジションづくりにつなげていきましょう。自社の強みが顧客から認識されていなければ、競合他社ではなく自社を選ぶべき理由を打ち出せません。
競合他社にはない自社独自の要素を明確にするうえでは、提供価値を機能便益と情緒便益の2つの視点に分けて考えていくことが重要です。
たとえば、機能便益には「肌本来のうるおいを守る、必要最低限の成分のみで作られた化粧水」などがあげられます。一方、情緒便益には「余計なものを省いたシンプルな成分で自分の素肌と丁寧に向き合っている実感が得られる」などがあげられます。
機能・情緒便益の2つの視点から自社の強みを整理していくことで、競合他社との差別化が図れ、バリュープロポジションを策定できます。
自社が生きるポジションを見つける
ここまでで、顧客のニーズと競合他社の提供する価値、自社の強みが整理できたら、次に自社が生きるポジションを見つけるステップに進みましょう。
まずは、3つの要素を調査・分析した結果を具体的に書き出す作業からはじめます。
次に、得られた結果を重ね合わせることで、「顧客が強く求めているにもかかわらず、競合他社が対応できておらず、かつ自社だけが提供できる領域」が明らかになるはずです。作業を通じて特定された領域が、市場における自社が生きるポジションだと判断できます。
バリュープロポジションの活用方法
定めた自社独自の価値を実際のマーケティング活動へ落とし込むことで、はじめて事業成長や拡大につながります。
ここでは、定義したバリュープロポジションの活用方法について3つの視点から解説します。
バリュープロポジションに合ったコピーを作成
定めたバリュープロポジションを活かすには、ターゲット顧客層に対して直感的に伝わるコピーへ落とし込むことが重要です。自社が提供する解決策やベネフィットを企業目線ではなく、顧客が日常的に使う言葉で表現する必要があります。
たとえば、パーソナライズヘアカラーを展開する「COLORIS」は、忙しくてサロンに行く時間が取れないと悩む顧客に対して、「大人の女性は、敢えて家で髪を染める」というコピーを打ち出しています。
このコピーによって自宅でのセルフカラーが妥協ではなく、自分らしく生活するための選択肢のひとつである、と顧客に伝わりやすい形で発信をしています。
Webサイトや広告、営業資料でも一貫したバリュープロポジションに合ったコピーを使用することで、見込み顧客の反応率向上につながる可能性が高まるでしょう。
ロゴ・デザインの作成
企業独自の価値をロゴやデザインといった視覚的な要素にも反映させることも重要です。企業が提供する価値がロゴやデザインといったビジュアル面と一致していなければ、ブランドとしての一貫性が損なわれかねません。
たとえば、自然素材にこだわるコスメブランド「SHIRO」は、「自分たちが毎日使いたいものをつくる」という企業の価値や想いを、無駄を削ぎ落としたシンプルなロゴ・パッケージデザインで表現しています。
企業が発信するメッセージだけでなく、顧客とのあらゆる接点でバリュープロポジションとデザインの一貫性を保つことがブランドの信頼感と認知度の向上にもつながります。
マーケティング施策の決定
バリュープロポジションが決まれば、具体的なマーケティング施策へと展開できます。企業が提供する価値が明確であれば、施策におけるターゲティングや訴求内容に不一致が生じず、限られた予算のなかで高い費用対効果を見込めるでしょう。
たとえば、「30代の働く女性が、忙しい朝に短時間で仕上がるコスメ」をバリュープロポジションとして定義した場合を考えます。
ターゲット顧客の年齢・性別を考慮すると、商品の魅力を視覚的に伝えやすいInstagramがメインの発信媒体として定まるでしょう。発信媒体が決まれば、顧客への訴求内容も絞り込めます。
バリュープロポジションが明確であるほど、ターゲットを絞った効果的なマーケティングに集中できるため、売上拡大につながります。
しかし、自社のバリュープロポジションの活用方法からマーケティング施策までの対応が難しい場合があります。
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バリュープロポジション設定時によくある失敗
バリュープロポジションを定義するなかで、企業が陥りやすい代表的な失敗パターンがあります。
ここでは、よくある具体的な失敗例を解説します。失敗パターンを事前に把握しておくことで、競合他者と差別化が図れる効果的なバリュープロポジションを確立できるでしょう。
自社のアセットを意識しすぎる
自社が保有するアセットを起点にバリュープロポジションを定義することはよくある失敗例のひとつです。
自社にできることを優先した結果、顧客が実際に求めている解決策ではなく、提供側にとって都合のよい商品やサービスに陥る可能性があります。
たとえば、独自の美容成分を配合したことを起点に商品開発をしたものの、顧客が実際に求めていたものは使い続けやすい価格帯や使用感であり、技術力の高さが売上につながらないケースは珍しくありません。
顧客のニーズからかけ離れた商品やサービスを生み出さないためにも自社のアセットから一度距離を置きましょう。自社が選ばれるためにも顧客視点に立った提供価値を定義することが重要です。
顧客の理想を意識しすぎる
顧客が求める理想を意識しすぎると競合他社との差別化が図れず、価格競争に巻き込まれる原因となります。
顧客の要望にすべて応えようとすれば、市場トレンドに追従するだけの商品になり、競合他社との違いが不明確になるでしょう。
たとえば、高品質な成分を求めるコア層をターゲットとしたスキンケアブランドで、価格競争を意識した商品開発を進めれば、自社が本来持つ強みが薄れ、低価格化を得意とする競合他社との差別化が難しくなります。
市場トレンドや顧客の要望を把握することは重要ですが、自社のリソースやアセットと冷静にすり合わせることが、事業成長・拡大に必要です。
属性のみで顧客をセグメントする
バリュープロポジションを策定するなかで、顧客の属性のみでセグメントしてしまうことは、よくある失敗例です。
年齢や性別といった表面的な属性だけでセグメントすると、顧客が実際に何に困っているのかを見誤り、広く浅い訴求になる可能性があります。
たとえば、40代女性という属性でセグメントしても、以下のような悩みが考えられます。
- 毛穴汚れや乾燥による肌荒れを気にしている
- 年齢を重ねていくなかでエイジングケアに関心がある
- 限られた時間を有効に使えるような時短ケアが気になる
同じ属性でも抱える課題は人によって異なるため、具体的な悩みとかけ合わせてバリュープロポジションを定義しなければ、誰にも刺さらない訴求になりかねません。
バリュープロポジションを設定するうえでは、属性だけでなく顧客が抱える悩みを起点にセグメントすることが重要です。
感覚で決めてしまう
経営陣や担当者の直感や経験則だけでバリュープロポジションを決定すると、実際の市場ニーズとの間に認識の違いが生じる可能性があります。
過去の成功事例や社内の思い込みに依存した意思決定では、現在の市場環境や顧客の変化を正確に反映できないためです。
データや分析にもとづいたバリュープロポジションを作り出せなかったために、競合他社に自社の顧客を奪われるケースは少なくありません。感覚ではなく、客観的な事実に応じてバリュープロポジションを策定していく必要があります。
感覚に頼らない客観的なデータにもとづく市場調査方法については、以下の記事で解説しているので、参考にしてください。
「なくてはならないもの」を作っていない
バリュープロポジションを策定する際に、顧客にとって「あったらいいもの」「よくあるもの」を設定しないよう注意する必要があります。
インタビューやニーズ調査をし、好意的な反応を示した商品やサービスを実際にリリースしても顧客から支持されないケースが数多くあります。
商品のアイデアが知人に「欲しい」と言われるケースはよくあります。しかし、実際に購入までいたるかというと、多くの場合、購入の必要性がなく、売り始めてから売れないことも少なくありません。
一方、ターゲットが抱える深刻な課題を解決できる「なくてはならないもの」を提供できれば、導入の必要性が高まり成約率の向上につながります。
顧客の声を参考にしながらも、本当に必要とされているものを見極めることが、明確な差別化を生み出すために必要です。
リソースが不足する
自社だけでバリュープロポジションを定義しようとした結果、社内人材や時間的リソースが不足することはよくある失敗例です。
リソースが確保されていない状態でバリュープロポジションを作ろうとすれば、客観的なデータ収集や競合・市場の分析が不十分となる可能性があります。ほかにも、自社の強みを感覚で判断したり、自社都合での価値定義に陥ったりするリスクもあります。
リソース不足を解消するためには、まず社内で担当者を明確に決め、バリュープロポジション策定に必要な工数を事前に確保することが重要です。
もし、社内リソースが不足して自社だけではバリュープロポジションを設定できないと課題を感じている人は、外注することもひとつの方法です。
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バリュープロポジションの事例
D2C業界におけるバリュープロポジションの事例は数多くあります。ここでは、日本の化粧品メーカーであるオルビスとドモホルンリンクルの事例を紹介します。
事例①:オルビス
オルビスのスキンケア製品は、バリュープロポジションの好例です。
「肌が本来持つ力を引き出すというブランド思想と徹底した顧客視点のサービス」という二つの価値を同時に提供することで、スキンケア効果と安心感の両方を求める消費者のニーズを満たしました。
競合他社に先駆けてECサイトをオープンし、その後も通販・直営店舗という複数の販路を順次構築したことで長年にわたり独自のポジションを確立しています。
また、本質的なスキンケア効果と開封後でも返品可能といった顧客本位のサービスを同時に満たす価値を提供できたことで、強いバリュープロポジションを作り上げています。
事例②:ドモホルンリンクル
ドモホルンリンクルもバリュープロポジションを顧客に明確に定義したブランドの一例です。
ターゲット顧客は年齢による肌悩みを抱える層で、「漢方とサイエンスの融合による年齢肌ケアを、顧客一人ひとりに寄り添いながら提供する」ことを強みに、他の化粧品ブランドとの差別化を図っています。
はじめての顧客には3日分の無料お試しセットを提供し、肌質に合うかを確かめたうえで購入できる仕組みを採用し、安心感を求める幅広い層から支持されています。
漢方の製薬会社としての知見に基づく商品開発・製造から、専門スタッフによる販売・アフターフォローまでを自社で一貫して行い、品質を管理している点も特徴です。製品力と誠実な顧客対応の両立が、ドモホルンリンクルのバリュープロポジションを支えています。
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商品やサービスがコモディティ化された現代では、企業独自の強みや価値を顧客に伝わる形で打ち出さなければ、価格競争に巻き込まれる可能性が高くなります。価格競争を回避するためにもバリュープロポジションを定義しておく必要があります。
バリュープロポジションを策定する際には、以下3つの要素に分けて整理しましょう。
- 市場調査による顧客ニーズ
- 競合他社が提供できていない価値
- 競合他社にはない自社独自の価値
当社では、市場調査から顧客分析・競合調査、ブランディングを意識した企業の強みの言語化までバリュープロポジション策定に必要な要素を一貫してサポートします。
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<この記事の編集・運営者>
株式会社 Venture Ocean