1年で会員数1位になった、chocoZAP(チョコザップ)のマーケティング成功法則を解説!

はじめに

みなさんこんにちは、佐々木です。
今回は最近決算発表をして話題の、
chocoZAPさんのマーケティングを考察してみたいと思います。
RIZAPグループさんの決算資料や、自分でのデスクリサーチをベースに考察するので、数字の正確さなどには少し欠けるかもしれませんがご了承ください。

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chocoZAP(チョコザップ)とは

RIZAPグループ株式会社さんが展開するジムです。
24時間365日全店舗使いたい放題で、月額2980円が売りのジムです。

https://chocozap.jp/より

chocoZAPはサービス開始の22年7月から、わずか1年の23年8月の段階で、
エニタイムフィットネス、カーブスの会員数を超え、日本一の会員数※になったジムです。(※RIZAPグループ社決算資料より)

https://ssl4.eir-parts.net/doc/2928/ir_material_for_fiscal_ym/140108/00.pdf  より

店舗数はわずか1年弱で880店舗を全国32都道府県に出しています。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/2928/ir_material_for_fiscal_ym/140108/00.pdf  より

マーケティング界隈でchocoZAPが話題になったのは、クリエイティブ検証数の多さです。
決算資料によると
・チラシの検証(500種類以上)
・バナー広告による検証(4000種類以上)
・LP(ランディングページ)による検証(200種類以上)
を実施していたそうです。
月換算すると、チラシが月40、バナーが月130、LPが月16
と、中々の数をこなしていますよね。

 

https://ssl4.eir-parts.net/doc/2928/ir_material_for_fiscal_ym/140108/00.pdf  より

では基本情報はこのくらいにして、chocoZAPのマーケティングについて考察していきたいと思います。

chocoZAP(チョコザップ)のヒット要因考察

これからチョコザップのヒット要因について考察していきます。
この考察の流れは以前の記事でお話しした、市場調査の流れに沿っています。
そちらを見て頂くと、より理解が深まると思いますので、ぜひ皆様ご参考にされてください。

市場調査のやり方を市場シェア1位達成マーケターが解説!

ヒット要因①:ターゲット

chocoZAPのターゲットは「ジムに定期的に通い続けている人」ではなく、
「ジムに継続的に通うことができなかった人」
をターゲットとしています。
このターゲット選定は既存市場とカニバリがないブルーオーシャンで、競合とぶつかることがないです。
また、ポイントはブルーオーシャンながら、マーケットサイズが大きいのがポイントです。
あくまでも肌感ですが、ジムに通っていたがやめてしまった人はジム利用経験がある人の中では結構な人数いるのではないでしょうか?

ヒット要因②:コンセプト

そしてこの大きな市場で消費者のインサイトを突くコンセプトで参入したのがヒットの大きな要因です。
そのコンセプトとは、
「着替え不要!洋服そのまま!入館から5秒でスタート!
ついでに運動できるジム」
です。
これまでジムに通ったけど、やめてしまった人たちにとにかく手軽さを訴求して、気軽に運動をすることができるという点を訴求しています。
そして価格もこの「手軽」さに合わせて安価にしている点もポイントです。

ヒット要因③:ポジショニング

先程のターゲットの話とやや被りますが、チョコザップはポジショニングが巧妙です。
ここがヒットの最大要因と言っても良いのではないでしょうか?
私が考える、フィットネス市場のポジショニングは下記です。

まずフィットネス市場の元々のメインは
ルネサンスさんやセントラルさんがポジショニングされている、中高年向けの筋肉トレーニング、健康維持領域だったはずです。

ここにエニタイムフィットネスさんが参入し、
年齢層の若い筋トレガチ勢向けのポジションが開拓されました。
また若年女性向けのHOTヨガとしてLAVAさんなども(筋トレではないですが)若年向けの意識高めのフィットネスとしてポジションを確立しています。

そしてカーブスさんは中高年向け女性にターゲットを絞り切って、新市場を切り開かれました。

ただこれまで若年の運動ライト/意識低い層へのソリューションがなかったのです。
ここにソリューションがなかった理由としては、そもそも市場がないと思われていたからでしょう。
そしてチョコザップはここにぴったりとハマり、市場を独占しつつあるのだと考えられます。
既存市場ばかりではなく、新市場を切り拓きに行くことの大切さがわかる好例ですね。

ヒット要因④:RIZAPと別ブランドにした

チョコザップをRIZAPと同じブランドにしなかったことも成功要因の一つではないでしょうか?
仮にチョコザップが、
「お手軽RIZAP」というような名前でライザップのトンマナを真似したクリエイティブで展開していたら、ここまでの成功はなかったと思われます。
RIZAPとチョコザップはポジショニング上、真逆であり、同じトーンの訴求を使うと顧客が違和感を感じてしまうので、ブランドを分けたのは正解です。
チョコザップのロゴや名前はライザップよりも親しみやすいものになっていますよね。
これが「手軽さ」を訴求するチョコザップの成功要因の一つなのではないでしょうか。

ちなみに現状展開している大きいブランドに紐づけたブランド展開というのは基本的にあまりうまくいきません。
なので、新規事業を既存事業と同じドメインで行う場合には、全く違うブランドとして展開をすることを私はオススメしたいです。

ヒット要因⑤:ネーミング

「チョコザップ」、「コンビニジム」というネーミングもコンセプトを踏襲していて非常に分かりやすいです。
「ちょこっと」というワードが手軽さを表しつつ、少し可愛さもあって、非常に親しみやすいネーミングになっています。
感情便益をうまく刺激しているなと感じます。
また、「コンビニジム」という名称も、チョコザップの便益を端的にあらわしていて非常に分かりやすいです。
そしてこの話題性を使って
日系トレンディなどの広報文脈を獲得し、追い風にできたのは非常に大きかったのではないでしょうか。

ちなみにネーミングについてはこちらの記事でも話しているので、良ければこちらも参照ください。

ブランド名の決め方を市場シェア1位達成マーケターが解説! ブランド名の成功事例も解説!

ヒット要因⑥:攻めるタイミングで攻め切った

そして日系トレンディで取り上げられ、世間的な認知も取れた段階で
一気に拡大路線を取ったのも成功要因としては大きいです。
世の中には流行り廃りがあって、同じことをするのでも、世の中に流行る素地があるタイミングかどうかで、結果は全く違っています。
今回のチョコザップは完全に成功するタイミングで大きな投資に踏み切ったのが成功要因でしょう。
このタイミングでテストしたいからと言って、小さくしか投資できていないとここまでの伸びは見せなかったのではないかと考えられます。
ここは経営陣の判断力と勇気の成果ではないでしょうか?

chocoZAP(チョコザップ)の課題と今後取るべき戦略考察

では次にchocoZAPの課題を考えてみましょう。

①ターゲットを絞るべき

まずはターゲットをもう少し絞るべきというのが私が思う第一の課題です。
現状のチョコザップのホームページのTOPは下記です。

よく言えばサラリーマンからOL、主婦までみなさんターゲットです!という訴求になっています。
ただ、裏を返せば、
誰を一番メインターゲットとしているのかが分かりにくい
という課題があると考えられます。
ターゲットが広い方が顧客パイが広がっていいじゃないか!と言われそうですが、真に自分に合うものでないと継続的な購買はされません。

また、出店するときにもどのターゲットを優先で行くのかが不明確になりがちです。
サラリーマンを狙うのであれば、オフィス街を中心に出店するべきですが、
主婦を狙うのであれば、住宅街を狙うべきでしょう。
このようにターゲットを明確にしていないと、大きな投資をする際の判断軸が難しくなります。

なので、まずはターゲットをもう少し絞って、その層から攻略をしていくのがマーケティングでは王道の攻め方です。

②真の競合を考え直すべき

2つ目は真の競合を考え直すべきかもしれません。
現状は決算資料を見る限り、
エニタイムフィットネス、ルネサンス、セントラルスポーツ、カーブス
を競合と考えていそうです。

確かにエニタイムやセントラルはビジネスモデルも似ているので、
ビジネスモデルの参考や収益性の観点では競合とすべきです。

ここからは調べてもバックデータ出てこなかったので、推測ですが、
チョコザップ会員は、女性比率が競合と比較して高いはずです。
少なくとも、女性比率が2割のエニタイムなどと比べると高いはずです。
なのでコアなターゲット層は若年女性のはずなので、ここをいかに伸ばすかを考えて戦う方が良いと思います。

そうなると真の競合は若年女性に強いLAVAであり、
「LAVAを続けられなかった層」を狙うのがベターかと思います。

③試すクリエイティブを絞るべき

試したクリエイティブの数が話題となったライザップですが、数はもう少し絞れるかもしれません。
現状は若年男女と主婦をターゲットとしているので、それぞれに合うクリエイティブを作成、ABテストを繰り返されているのではないかと想定しています。
ただ先ほどからお話しているようにターゲットを絞れれば、実際にABするべきクリエイティブの数は絞られ、資金面でも人的リソースの面でも、
もう少し効率化できるのではないかと考えられます。

④既存店の収益改善・既存顧客のLTV向上

チョコザップは会員数は日本一になりましたが、そこには新規出店が大きく貢献していると見られます。
一方で出店は費用がかさむので、さらなる出店はさらに赤字を掘るか、既存店の売上から賄わないといけません。
下記はエニタイムとカーブスとチョコザップの各種指標の比較です。

各社の決算資料から推計

ここから分かるように、チョコザップは単価が安い分、エニタイムやカーブスと比較すると想定の月収益(単価平均×会員数)が低い可能性が高いです。

単価を上げるのは「お手軽」のコンセプトからは外れるので、
客数を増やさないといけません。
新規の顧客はこれからも配荷を伸ばしながら、広告を掛けていくはずです。
なので、既存顧客に対するアプローチをして、いかに解約率を下げるか、が大切です。

既存顧客にはアプリやSNSなどを使ってアプローチされていそうで、
ここをもう少しブーストしていくのが良いかもしれません。
「お手軽」という機能便益での結びつきが強い顧客との関係性だからこそ、
特にSNSなどで情緒面でのつながりを持っていくとLTVが向上しやすいと考えられます。
情緒面の結びつきが強くなれば中長期的には値上げも可能になってくるでしょう

④まとめ

今回は話題のチョコザップさんのマーケティングを考察してみました!

まとめるとヒット要因は
①ターゲット
②コンセプト
③ポジショニング
このあたりはマーケティングの基本で、忠実にやられているなという印象です。
また
④:RIZAPと別ブランドにした
⑤:ネーミング
⑥:攻めるタイミングで攻め切った
このあたりはかなり上級のマーケティング巧者だと感じられました。

やっぱり大きなヒットにはマーケティングの成功要因が詰まっているなと思いました!

というわけで今回は以上です。
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